FRP雌型製作

国土交通省関東運輸局に、指定された書類を全て提出して後は認可待ちの状態ですが、この間にボディーの雌型を製作して、今後の量産に備えた準備をしています。
試作車から外されたボディーは、全ての装着部品を取り外しました。
各種試験及び試走時には、外観部分の仕上げを優先し、装着部品等で隠れてしまう部分の仕上げは後回しになっていたので細かい部分を丁寧に仕上げて行きます。
装着部品で隠れてしまう部分やボディーの裏側(客室部分)などはそれ程の仕上げ精度は必要無いのですが、FRPによる型抜きをする場合は、雌型にFRPを張り込んで成型した後に脱型して製品原型が出来上がるので、各部表面の仕上げを充分に行わないと製作精度が低くなってしまいますので、外観部分並みの仕上げが必要となります。
また、脱型を確実に行う為には、各面の脱型方向を考慮して相対する面の角度を鈍角にしなければなりません。
その為、慎重な作業が必要になります。
見えない所ですが、外観以上に神経を使う作業は時間と手間が掛ります。
それが終わると、ボディー全体の磨き作業と表面処理が行われます。
全体をポリッシャーを使用して、中目:細目:微粒子:超微粒子のコンパウンドに分けた磨き作業、その後に離形用ワックスを5回以上塗り込みます。これが下地作業となります。

この写真で、相対する面の角度が鈍角に仕上げられているのがわかると思います。
全ての面についてこの様な角度を保持しておかないと、脱型作業に重大な支障が起こり製品の製作が不可能となってしまいます。

次に重要なのは、型割の決定です。
何気なく思われる部分でも、先ほどの相対面角度の関係で、脱型できない部分が存在します。
その場合は、雌型を分割して対応する事になります。
製品は一体で成型する必要があるので、分割された雌型は全て組み立てられなくてはなりません。その組立が正確に行われないと製品の精度が下がり品質が低下してしまう事になります。組み立てを正確に実行するのに必要なのが組立用のリブ(ステーの一種)です。
写真でシルバーに見える部分がそのリブを作る為のリブ(衝立)です。
これも何気なく付けられてる様に見えますが、このリブの方向と形状及びその角度を慎重に決定して、丁寧に作業しなければ、相対角度及び脱型作業そして製品仕上げ精度に重大な問題が発生します。
雄型の表面に一時的とはいえリブ製作用の衝立を作るわけですが、今後の作業に耐えられる強度を有し、かつ雄型面に密着させる必要があります。そして雄型の表面に傷を残す訳には行きません。
製作は慎重にかつ丁寧過ぎる程に気を使う作業となります。
まさに、縁の下の力持ち状態、表舞台には決して出る事は無いのですが、最高に重要な役柄と言えます。作業時間もサイドカー製作作業中最も長い作業の一つでしょう。
今回のGTRのボディーの場合、割型の数は約25~30ピース必要と思われます。その一つ一つに組立用のリブが必要ですので、気が遠くなりそうな作業でなのです。
写真は、本車ハンドルの左側:サイドカー風防ヒンジ取付部分となる場所ですが、曲面と凹み部分が入り組んでいるので、この部分だけでも3~5ピース必要となります。
これらの作業がとりあえず一通り終われば各部分に分けて、もう一度下地処理(離形用ワックス掛け)を5回程してから、PVA(ポリビニールアルコール)離型剤を塗ってからようやく、雌型製作になります。
割型各ピース毎に、その作業を繰り返し雌型製作が完了です。
作業はまだまだ続きますので、御期待下さい。
スポンサーサイト